親が子に「勉強しろ」と言うことが禁句とされる理由は、心理的な影響や学習意欲の低下を引き起こす可能性がある。
「いつまで遊んでいるの!早く勉強しなさい!」
どこにでもある家庭のの1コマだと感じたら、教育に失敗している可能性があります。
様々なところで、親が子供に「勉強しなさい」というと、学力が低下する。つまり逆効果になるということが、徐々に明らかになりつつあります。
目次
親が子供に勉強しなさいと命令する時点で終わっている
親は気づいていないようですが、子供に勉強しろと命令しています。あなたにも経験があるはずです。上から目線で押さえつけられ、命令されて反発心が芽生えたことを。
「勉強しなさい」と子どもに言うことが逆効果になる理由は、「心理的リアクタンス」という現象に関連しています。これは、自由を奪われたと感じたときに生じる反発心のことです。例えば、子どもが「勉強しろ」と命令されると、それに反発して勉強への意欲を失うことがあります。
データによると、「勉強しなさい」と言われた子どもは、そうでない子どもより平均的に勉強時間が短く、中学生では約25分も少ないことがわかっています。また、親が「勉強しろ」と言わずに子どもの自主性を尊重することで、子どもは自然と学習意欲を持つようになります。
親が自ら学ぶ姿勢を見せたり、一緒に勉強計画を立てたりすることで、子どもは目標を意識し、そのために勉強する意欲が高まります。親のエゴや期待を押し付けず、子どもが自ら学びたくなる環境を整えることが、効果的なアプローチとなります。
では、どうすればいいのか?
すでに答えをご存知のはずです。
自主性を育てることに全力を傾ける
命令しても、嫌々で勉強するだけ。しかも長続きせず、いずれ反動がやってきます。
反抗になって家に帰ってこなくなったり、成績がどんどん下降していったり。その一方で、勉強しなさいと、一言も発していないのに自ら勉強して、「○○学習塾に行きたいんだけど」と、自分からお願いしてくる。
そんなに勉強をしている感じではないのに、成績がどんどん上がり気づけばクラスでもトップクラスに。
あるいは不器用だけど、少しずつ成績が上がっていく子ども。
このような事例を実際に目にすると、命令しない方が勉強を進んでやる子どもに育つ可能性が上がると分かります。
指示待ち族の恐ろしい将来
「なんで、オレがリストラ対象なんだよ」
ある日、上司に呼び出され自分が会社に必要のない人間だと告げられた。
「仕事はやっている。成果も出している。それなのに、なんでオレなんですか?」
「仕事はやって当たり前だ。成果を出すのも当たり前。なぜ、自分なのか分かっていない。だからだよ」。
その瞬間、頭の中が真っ白に。気づけば上司の首を絞めていた。結果は解雇だ。
退職金もでない。会社にとっては好都合。サッカーで言えば自分のゴールにボールを入れた温ゴール。自滅だ。
こんな最悪の未来が、あなたの子どもに降りかからないと言えるでしょうか?
企業が求めるのは、命令の服従、それは当然のことです。言われたことをきっちりやるのも当たり前。
問題はその先、例えばライバル企業の新製品を調べろと言われたら、
- 商品の性能(スペック)
- その商品のターゲット(性別、年齢、どんなところで使用を想定しているのか?)
- 使えるものであれば、実際に自分が使ってみてその感想をまとめる。
だけではなく、ここ数年の商品の傾向、ライバル企業はどんな考えで新製品を作っているのか、今回の新製品の次はどんなものを出そうとしているのか?
そういうものを過去のデータから推測して、上司に報告する。これは最低限のことだと考えます。
ところが彼は、上司に言われた最低限のことしか調べておらず、常々不満に思っていたはず。
「はい。ライバルの新製品を徹底的に調べました」。
「そうか。ご苦労だった」という言葉の底、心の中の声はさらに続く「上司に、これだけか?これじゃ、子どものお使いだな」と。
しかし、いまのご時世、部下が嫌がって辞めてしまうと上司の失態になる。だから言わない。それにパワハラだとか言われてしまう始末。
だから上司は黙って、別の部下に新製品のリサーチを再度、任せる。
その結果、彼はリストラのリスト入り。本人は気づいていないですが、理由は本人にあったわけです。
では、なぜ彼はそんな人間になってしまったのか?
遡ること子どもの頃。
親に「勉強しなさい!」と命令され、怖いから言われたことだけをすることにした。少しでも違うことをすると、「何やってるの!」と叱れる。
その結果、どんどん新しいものに挑戦する意欲がなくなり、言われたことだけを無難にこなす指示待ち族の子どもが完成した。
その子が大人になっても変わらない。すでにその習慣が染みついているから。
実際には上司へのごますり、社内でも人脈も影響しているので、あくまで一例として受け取ってください。
まあでも、この時代、生き残るには、どうすれば良いのか?すら考えられない思考能力になってしまっているのは致命的。
【自主性】自分で動いた方が気持ちよく実践する
例えば家のお手伝いでも、親に言われると反発するけれど、自分からお風呂掃除や皿洗いをするようになると長続きします。
仕事でも同じで、上司に言われてから行動すると気分が何となくやらされている感があって、気分は良いものではありません。
同じことをするのにも、指示される前に自らが提案して「課長、それ私にやらせてください」と言った方が、気持も良いし任されたときのやりがいも出ます。
もし、どうせやらなければダメだと分かっているなら、自分でやると決めて行動した方が良い結果になることが多い。
人に言われてやると、ほんと気分が悪い。だったら自分でやろうと子どもが考えてくれるようにしていくことが効果的。
将来、悲劇を向かえないために、自主性を育てたい。
ちなみに勉強机で勉強すると成績が上がらないかも。
参考 リビング?子どもは勉強机で勉強すると成績が上がらない!
自分で進んで勉強した成功者
例えば『さかなクン』さん、歴史学者の磯田さんなども、親に言われて勉強した訳ではなく、
「これ、面白い!」と、自分から興味を持って楽しくやっていったら、それが仕事になったという。
自主性の塊のような人たち。学ぶこと、得るものは多い。
関連記事:こんな人いる?磯田道史さんの魅力は歴史学者の枠を超えた規格外の人間性にあった!
プロのスポーツ選手なども、最初は親が進めたかもしれませんが、どこかの時点で自分からもっとやってみたいと考えてから、練習量が増えて自分で研究もして上達したのは容易に想像できます。
親が子どもに「勉強しなさい」と言うのは簡単ですが、効果がなく勉強嫌いになるリスクの方が高いのでもう一歩、知略を巡らしてから行動したいものです。難しいですが。
ちなみに我が家でも、子ども勉強しなさいと言った記憶がありません。それはここで紹介したことを想定していた訳ではありませんが、自分が言われて嫌だったことは言わないようにしただけです。
しかし効果は抜群。自分で勉強して進路も真剣に考えて、自ら前進してくれました。
もし将来のため子どもに勉強を頑張って欲しいと願っているのであれば、自分で興味をもって学習するキッカケを与えることが大切です。
悲劇にならないため、自主性を育てるため、遠回りしているようでも、小さな頃は好きなことをさせる余裕をもちたいものです。
参考文献
- 「勉強しなさい」は逆効果 みずからする気持ちが育つには (思春期まっただなか)
掲載誌 婦人之友 111(7)=1370:2017.7 p.102-107 - 尚絅大学研究紀要 人文・社会科学編 第47号:(39~47)(2015)
教育する家族の諸課題
―学齢期の子どもを持つ母親の教育的態度に焦点を当てて―
片 桐 真 弓
Problems of the Family to Educate
Focusing on Educational Attitudes of Mothers with School-Aged Children
Mayumi Katagiri - 大阪総合保育大学紀要 第 8 号 2013
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*大阪総合保育大学 児童保育学部
〔論文〕
子どもの自己確立をめぐる課題
―自己と他者・社会・自然の関わりについての質問紙調査から―
宮 﨑 加代子
釣りやレモン栽培などをきっかけにブログで発信。子供の頃から母親に教えてもらい野菜の栽培や挿し木などの方法も学ぶ。40坪ほどの畑を借りて100種類ほどの野菜を栽培していた経験も。現在は庭で趣味の園芸を楽しむ。