
筆者撮影
レモンの栽培に挑戦している方にとって、「せっかく実がついたのに落ちてしまった…」という経験はとても残念なものです。
特に、挿し木から育てた若木で初めて実がついたときは喜びも大きく、その後の落果に落胆する人も少なくありません。
この記事では、筆者の経験をもとに、挿し木3年目で結実したレモンの果実が未熟のまま落ちた理由と、その対策についてわかりやすく解説します。
未熟果の落果はなぜ起こる?レモン栽培でよくある原因とは
まずは、レモンの実が成長途中で落ちてしまう「生理落果」の主な原因と背景について確認しておきましょう。これは病気や害虫とは異なり、木の生理的な反応によって引き起こされる自然現象です。
木の生理的な未成熟(結実に耐えられる体力がない)
まだ若い木にありがちな問題です。見た目には元気に育っているようでも、木全体が果実を支える体力を持ち合わせていないことがあります。
挿し木3年目の木は、まだ十分な樹勢が備わっていないことが多く、果実を育てるための体力が足りずに落果してしまいます。
無理に着果させると、木が弱って最悪の場合枯れてしまうことも。
対策:あと1〜2年は育苗期間として、木の充実を優先しましょう。
葉数が少ない(光合成量が不足)
レモンの木は光合成で栄養を作り、そのエネルギーを使って果実を育てます。葉が少ないと、当然その力も不足してしまいます。
葉は栄養をつくる工場です。葉の枚数が足りないと、果実の肥大に必要なエネルギーが不足し、木は実を落とします。
対策:剪定を控え、若木のうちはできるだけ葉を残して育てましょう。目安は実1つに葉数40枚以上。まだ小苗で葉数がが少ない場合は、40~50枚くらいになるまで樹を充実させます。
葉数の目安:約40〜50枚(推奨)/ 実1個あたり
根に蓄積された栄養が少ない
レモンの木は、春に前年に貯めた栄養を頼りに開花・結実します。地上部だけでなく、根の栄養状態も重要です。
レモンは前年に蓄えた養分を使って葉や勢いのある新梢をださせ、その葉がしっかり光合成をして花を咲かせ、果実を育てます。
根に貯蔵された栄養が少ないと、新芽の勢いが弱く葉も少なく途中で実を育てきれなくなります。
対策:前年の秋〜冬にしっかり光合成させ、緩効性肥料を適切に与えましょう。
自然な生理落果
必ずしも失敗ではありません。木が自らの生理状態に合わせて調整する「正常な反応」として、落果が起きることもあります。
若木や鉢植えでは、自然な落果もよく起きます。これは病気ではなく、木が体力に合わせて果実数を自ら調整しているのです。
対策:1本の枝につき1〜2果安(葉数は1実40枚程度を目安)に摘果して、負担を減らしましょう。
生理落果を減らすための具体策
ここからは、レモンの果実が落ちるのを防ぐために、家庭栽培でも実践しやすい管理方法を紹介します。木の体力を高めることで、落果のリスクを抑えましょう。
木が十分に育ってから実をつけさせる
果実をつけるには、それなりの体力が必要です。若木には「休ませる」ことも大切。
挿し木苗は4〜5年目以降の結実が理想です。若いうちは摘果して、木の体力づくりを優先しましょう。樹の根元の幹
葉を多く育てて光合成量を確保する
果実1つを育てるには、たくさんの葉が必要です。必要な枚数を意識して育てましょう。
目安としては、1果に対して20〜30枚以上の葉が必要です。
日当たりと風通しのよい場所で育てる
光と空気の流れは木の健康に直結します。環境を見直すことも大切です。
日照不足や湿気は落果のリスクを高めます。南向きで日がよく当たり、風通しのよい場所に置きましょう。
水やりを適切に行う
水の与え方にもコツがあります。過湿・乾燥を避けることが落果対策にもつながります。
極端な乾燥や過湿もストレスになります。土が乾いたら朝にたっぷり水やりをするのが基本です。
肥料を適切に与える
木の健康は、土づくりから。肥料のタイミングと種類も落果に影響します。
春と秋に緩効性の肥料を与えて、木の健康と根の栄養を保ちましょう。
花や実が多い場合は摘果する
たくさん実をつけたくなりますが、木に負担をかけないためには制限も必要です。
果実が多すぎると木の負担になります。1枝に1〜2個を目安に摘果しましょう。
まとめ|焦らず木を育てれば安定収穫へ
レモンの若木で果実が未熟なまま落ちるのは、木の体力不足、葉の枚数不足、栄養不足が主な原因です。
これは自然な「生理落果」であり、焦らず樹勢を整えることが何より重要です。
今後のポイント
- 実を育てる前に、木をしっかり育てることを優先する
- 剪定を控えめにし、葉をしっかりと茂らせる
- 春と秋に緩効性の肥料を適量与え、樹勢を強くする
- 結実数が多い場合は、1〜2個に間引いて木への負担を減らす
着果してよいレモンの木の目安
最低100枚以上がひとつの目安。
レモン1果を育てるのに、40〜50枚程度の葉が必要と言われています。
→ 実を2個育てるなら100枚以上の葉が必要。
鉛筆より太い(直径8〜10mm以上)が理想。
幹が細いと、果実の重さや養分の移動に耐えきれず、木が弱ります。
根の状態(重要)
根張りがよく、鉢植えであれば鉢底から根が出始めている、あるいは植え替えが必要な状態が健全な根の目安です。
挿し木から2年以上経っていて、根詰まりしていない健康な状態であること。
樹勢(全体の勢い)
- 葉の色が濃緑でツヤがある
- 新芽が毎年元気に出ている
- 病害虫がなく、枝ぶりがしっかりしている
着果を控えるべき状態
- 挿し木後 1〜2年以内(根がまだ未熟)
- 葉が少ない、色が薄い、黄変・落葉が多い
- 幹が細い(鉛筆未満)
- 花は咲くが、樹勢が弱く果実が落ちやすい
補足:着果させる数は慎重に
木を弱らせないため、最初の1〜2年は
→ 花は摘む or 1果までに制限が推奨されます。
挿し木苗でも、適切に育てれば3〜5年で立派な実が収穫できるようになります。
焦らず、レモン栽培を楽しんでください。

釣りやレモン栽培などをきっかけにブログで発信。子供の頃から母親に教えてもらい野菜の栽培や挿し木などの方法も学ぶ。40坪ほどの畑を借りて100種類ほどの野菜を栽培していた経験も。現在は庭で趣味の園芸を楽しむ。