
ピートモスは年々価格が上昇しており、使用量を減らしたり、そもそも使わない栽培方法を模索する動きが広がっています。こうした流れは「脱ピートモス」とも呼ばれています。
そもそもピートモス(酸度未調整タイプ)がブルーベリー栽培で使われてきた理由は、誰でも簡単にブルーベリーが好む酸性環境を作れるからです。
一般的には、ピートモス1:鹿沼土1で混合すれば、排水性・保水性・酸度のバランスが取れた培養土になります。しかし近年では、ピートモスを使わずに成功している事例も確認されています。
目次
ピートモスを使わないブルーベリー栽培の考え方
代表的な例が、ブルーベリー観光農園などで行われている溶液栽培です。これらの栽培では、ピートモスは一切使われていません。
水と肥料、そしてpH調整剤を含んだ養液を、点滴潅水によって供給することで生育させています。

イメージ(筆者撮影:この画像はただの水やり)
このような栽培で使われる培地は、アクアフォームなどの人工資材が中心です。フラワーアレンジメントに使われる素材に近く、給水性・保水性に優れているのが特徴です。
ピートモスを使わずに栽培できる理由は単純で、養液そのものがブルーベリーに適した酸性に調整されているからです。
ブルーベリーに必要なのは、肥料・酸性環境・光。この3つが満たされていれば、土の種類そのものは必須条件ではありません。水耕栽培でも育つことからも、この点は明らかです。
ブルーベリー栽培の本質は「酸性環境」
結論として、保水性と通気性があり、なおかつ酸性であれば、ピートモスを使わなくてもブルーベリーは栽培できます。
問題は、どうやって安定して酸性環境を作るか、という点です。
家庭栽培で現実的なのは、次の方法です。
- 土壌改良用の硫黄粉を使う方法(遅効性)
- 硫安など、酸性に傾きやすい肥料を使う方法(即効性・維持向け)
この2つを組み合わせることで、ピートモスを使わずに酸性土壌を作ることができます。
なお、酸性のバーク堆肥などの資材を使う方法もありますが、入手性や酸度のばらつきが大きく、園芸初心者には管理が難しいため後述します。
繰り返しになりますが、これから初めて鉢植えで育てる場合は、ピートモスと鹿沼土を1:1で使う方法が最も安全で簡単です。
硫黄粉(土壌PH調整 微粉硫黄99.7%)

畑や庭の地植えでよく使われるのが、「土壌PH調整 微粉硫黄99.7% 土壌改革」といった硫黄粉です。
この資材は即効性はなく、効果が出るまで1~3か月、寒い時期では半年近くかかることもあります。そのため、主に地植え向きで、鉢植えでは管理が難しい点に注意が必要です。

筆者撮影
使う場合は、必ず説明書を確認し、少量ずつ調整してください。
分量には経験が必要で、酸度測定は必須です。
※2025年12月追記:栽培を続けるうちに土壌管理が安定し、現在では酸度測定は年2回程度に減っています。いくつかの代表的な鉢や地植えの苗をチェックするだけで済むようになりました。
硫安で酸性土壌を維持する
硫安は窒素肥料ですが、ブルーベリー栽培では好んで使われます。植物が養分を吸収する過程で、土壌が酸性に傾くためです。
硫安は、すでに酸性寄りの土壌を維持・微調整する目的で使うのが基本です。何も植えていない場所に撒いても、すぐに酸性になるわけではありません。
窒素肥料のため、使いすぎは厳禁です。徒長や病害虫(アブラムシ等)の原因になります。
筆者の場合、植え付け前に硫黄粉で下地を作り、その後は硫安を追肥として使っています。時間をかければ、ピートモスなしでも十分な酸性環境を作れます。
ピートモスを使わない場合は、植え付け前に必ずpH測定を行いましょう。pH6.5以上では生育不良や枯死のリスクが高まることが、研究論文でも示されています。
過去に石灰資材を使用した土地では、特に注意が必要です。
酸性の資材を使う方法(上級者向け)
杉皮堆肥やバーク堆肥など、繊維質が多く酸性に傾いた資材を使う方法もあります。ブルーベリーは通気性を好むため、相性は良いです。
ただし、見た目や感覚だけで判断せず、酸度測定を行うことが重要です。実際には中性に近いケースも少なくありません。
- ココチップ・竹チップ(入手性に注意)
- 繊維質の多いバーク堆肥(牛糞主体でアルカリ寄りのものは不向き)
ブルーベリーにピートモスを使わない栽培方法まとめ
ブルーベリーは、ピートモスを使わなくても、酸性環境を作れれば栽培可能です。

酸性土壌を作る主な方法は次の3つです。
- 硫黄粉(土壌改良用)
- 硫安(窒素肥料)
- 酸性資材(バーク堆肥など/上級者向け)
近年では、エリコイド菌根菌を活用した脱ピートモスの試みも進んでいます。
筆者の場合、鉢植えは即効性と安定性を優先してピートモス+鹿沼土を使用。地植えではピートモスを半分以下に減らし、硫黄粉と硫安で調整しています。
配合例(イメージ):ピートモス:鹿沼土:バーク堆肥:庭土=1:1:1:1
地植えでは、あぜ板300Nを使うことで、ピートモスの使用量をさらに減らしています。
※ブルーベリー栽培初心者は、最初の鉢植え・地植えではピートモス使用がおすすめです。
釣りやレモン栽培などをきっかけにブログで発信。子供の頃から母親に教えてもらい野菜の栽培や挿し木などの方法も学ぶ。40坪ほどの畑を借りて100種類ほどの野菜を栽培していた経験も。現在は庭で趣味の園芸を楽しむ。